長崎の米軍キャンプに勤務する米兵が、時を同じくして朝鮮戦争に身を投じる同法の米兵との距離を「深い河」と喩えるところまでは、非常に良く読める。基地での彼らの暮らしぶりは、アルバイトという立場の主人公の視野でも十分に理解できるものであるし、何より、戦火の中の安らぎの不在、というテーマに対して真摯な向き合い方をしているのが好ましい。
しかしこの米兵に感化され、病魔によって危篤状態となった馬を殺すことで自らも「深い河」を越えたとする考え方は、少し変だと思った。戦争で敵軍の兵士を殺害することと、病に倒れた家畜を「処分」することに、そこまで似通った点があるのだろうか。強いて言うなれば、職業的行動によるもの、と言えなくもないのだろうが。
第六十一回受賞作(1969年)
わたしの評価 ☆
わたしの印象に残った選評 疑問の点がいくつか有って、私は積極的には推さなかった。実直な描写は買うが、その描写が抜け出たもう一つ新しいものがほしいと思った(石川達三)
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