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三匹の蟹 大庭みな子

ダイヤモンド
三行でこの小説を表すのであれば、観念。あるだけ。無感動。という三つに尽きると思うが、この小説にある出来事といえば、外地妻が現地の行きずりの男と一線を越えかけるが、結局金を盗まれて終わる、というものだけ。内的に主人公の何かが動いている様子は無く、もともとダルな日本人女性の内面的生活がそこにあるだけ、という具合のものだ。
が、戦争が終わり、二十年余りの時が経ち、この小説が書かれ、評価を受けた、という事実に、西洋由来の女性に対する純潔幻想が当時の確立された世論としてあったことが伺える。だが、それは当時だから評価されたことであって、この小説が時代を超え、永世の小説として語り継がれる運命にはないということもまた、事実という石をひっくり返せば見えてくるものだ。


第五十九回受賞作(1968年)
わたしの評価 ★

わたしの印象に残った選評 むしろ世評の甘さに驚いた。私は一般の好評を向うにまわして、敢て評価出来なかった。殊に最後の結びは、平凡な余情小説のタイプだ。桃色シャツの男も書けていないし、二十ドルを取られた話も、作為でしかないようだ。ただ、いいと思ったのは、在米日本人が日本人に好かれず、主人公自身もいやだと言っている点に正直な作者の素顔がのぞかれた(舟橋聖一)
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