わたしの関心からはかなり遠い小説であったが、それでもこの小説の持つ静かな魅力には引き寄せられていた。この人生、何があったか。十五歳のときに母親は死んだ。そしてその時のことを三十三歳になって、小説にする。この十八年余りの時の遠さは、極めて現実的な距離であり、甘い感傷が入り込む余地を生まない。
第五十四回受賞作(1965年)
わたしの評価 ☆
わたしの印象に残った選評 このややたどたどしい北国の自然の描写には、あるひたむきな感情の流れがあり、敗戦直後の暗い農村を背景に、清純な母子像を彫りあげています。単純すぎて、ものたりぬ点はあっても、効果をあてこんだ芸と工夫ばかり氾濫するなかで、珍しく、澄んだ心が感じられる作品です(中村光夫)
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