この小説もまた、明治時代の考えで書かれているような小説である。売れない作家志望の夫と、その文学的才能に信を置いていない妻。時折出てくる妻の嘆息が、これは実体験なのか、と思わせるほど生々しく、それでいて表題の「玩具」とは何を指し示しているのか。夫の飼っている金魚や鼠か、それとも夫自身かわからないが、この小説は誰のために書かれたものでもないように思える。それほどに、この表題からは露悪的な意思を感じる。それはまるで、実在する小説家の夫に対する愚痴を小説という形式で綴ったかのように。
第五十三回受賞作(1965年)
わたしの評価 ★★
わたしの印象に残った選評 まとまりの良い作品であって、夫婦の生活を二人きりの場で丹念に描いている。その限りではよく書けた作品だが、それ以上のものがない。そして文学とは(それ以上)のものを要求するものだと私は思う。この作品には大きさも無いし高い精神も見られない。(石川達三)
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